変形性股関節症で「筋肉をつけなければ」と運動を始めても、脚の付け根が詰まる、翌日に痛みが増える、歩き方がかえって崩れることがあります。リハビリは、痛みを我慢して回数を増やすことではありません。現在の病期、可動域、荷重能力、歩行、生活上の目標に合わせて順番を変える必要があります。
まず整形外科で、変形の程度、大腿骨頭壊死症などの別疾患、手術適応を確認し、必要な医療を受けることが前提です。その後も靴下、階段、車の乗り降り、買い物、旅行などが戻らない場合に、画像だけでは分かりにくい全身機能を評価し、リハビリを生活へつなげます。
この記事でわかること
- 股関節リハビリの基本的な順番
- 痛みが増える運動の見分け方
- 可動域・筋力・歩行の選び分け
- 日常動作へ戻す段階づけ
- 手術前後と保存療法の違い
- あつ整体院が評価する内容

変形性股関節症のリハビリは何を目指すのか
リハビリの目的は、レントゲン上の変形を体操で消すことではありません。痛みを管理しながら、必要な可動域、身体を支える力、歩行能力、生活動作を保ち、可能な範囲で活動を取り戻すことです。
同じ診断名でも、初期で長く歩くと痛む人、動き始めがつらい人、靴下が履けない人、片脚へ乗れない人、夜間痛が強い人では優先順位が違います。全員へ同じストレッチや中殿筋トレーニングを当てはめると、関節前面の詰まりや外側痛を増やすことがあります。
私は「何回できたか」より、運動後に歩行が整ったか、翌日の痛みが戻る範囲か、目標動作が少しでも変わったかを見ます。運動が上手でも生活で使えなければ、リハビリとして不十分です。
最初に整形外科で確認する理由
脚の付け根や股関節の痛みには、変形性股関節症だけでなく、大腿骨頭壊死症、骨折、感染、腫瘍、腰椎・末梢神経由来などが含まれます。急に体重をかけられない、転倒後に悪化した、発熱を伴う、安静時痛が増え続ける、急な筋力低下がある場合は、運動より診察を優先してください。
整形外科では、診察、レントゲン、必要に応じてMRIなどで病期と手術適応を確認します。薬、注射、医学的リハビリテーション、関節温存術、人工股関節全置換術が必要と判断された場合は、その指示を尊重します。
医療で症状と生活上の問題が解決すれば、無理に整体へ来る必要はありません。一方、明確な手術対象ではない、手術まで期間がある、術後に医師の許可範囲で生活機能を戻したい、保存療法を続けても歩行が変わらない場合は、あつ整体院が関われる範囲です。
リハビリは5段階で考える
第1段階:痛みと負荷の整理
どの動作で、何分後に、どこが痛み、何をすると落ち着くかを確認します。調子のよい日に家事や外出をまとめ、翌日に動けない方は、運動不足だけでなく負荷配分の問題があります。まず悪化の山を小さくし、毎日続けられる活動量へ整えます。
第2段階:必要な可動域を確保
股関節を大きく開くこと自体を目標にしません。立つ、歩く、靴下を履く、車へ乗るなど、必要な動作に足りない方向を確認します。前面に鋭い詰まりが出る深い屈曲・内転・内旋を無理に押し込まず、骨盤や腰椎の代償も見ます。
第3段階:支える力を取り戻す
中殿筋だけでなく、大殿筋、内転筋、深層外旋筋、体幹、反対側の脚、足部まで含めて荷重を支えます。横向き脚上げで外側が痛む人へ同じ運動を続けず、等尺性収縮、両脚支持、立位での重心移動などへ難度を下げます。
第4段階:片脚支持と歩行
歩行では一歩ごとに片脚で身体を支えます。患側へ乗る時間が短い、体幹を患側へ傾ける、骨盤が反対側へ落ちる、つま先が外を向くなどを確認し、歩幅や速度を調整します。杖を使う場合は原則として痛い側と反対の手で持ち、医療者の指導を受けます。
第5段階:生活と目標へ戻す
平地歩行ができても、階段、坂道、買い物、車、靴下、旅行は別の能力が必要です。希望する生活から逆算し、段差、連続歩行時間、荷物、方向転換などを段階的に練習します。
可動域訓練でやってはいけないこと
「硬いから伸ばす」という発想だけで、脚の付け根に鋭い痛みや詰まりを出すストレッチを続けるのは避けます。特に、足首を反対膝へ乗せて膝を強く床へ押す、深くしゃがむ、開脚を反動で広げるなどは、状態によって関節前面を刺激します。
ストレッチ中の軽い伸張感と、関節深部の鋭い痛みは分けて考えます。終了後に歩き始めが悪化する、夜間痛が増える、翌朝まで残る場合は刺激過多です。回数や時間を減らすだけでなく、その方向が本当に必要かを見直します。
可動域制限が骨性変形や関節包の拘縮による場合、手技で無理に正常角度へ戻そうとするのは現実的ではありません。現在使える範囲で骨盤、腰椎、反対側股関節を適切に連動させ、生活に必要な動きを確保します。

筋力トレーニングは痛む筋を責めない
変形性股関節症では、中殿筋の筋力低下が注目されます。しかし、横向きで脚を上げる運動が全員に適するわけではありません。大転子周囲が痛い、腰を反らす、脚を前へ振り出す、骨盤が回る場合は、狙った筋が働かず別の組織へ負担が逃げています。
初期には、仰向けや座位で軽く力を入れる等尺性運動、両足で立って左右へ重心を移す練習、椅子からの立ち上がりなどを使います。痛みが安定したら、段差、片脚支持、方向転換へ進めます。
筋肉痛が少し出ることと、関節の痛みが悪化することは同じではありません。運動中の痛み、終了後、数時間後、翌朝の反応を確認します。翌日に跛行が強くなる、夜間痛が増えるなら、負荷・回数・運動種目を修正します。
歩行練習は「たくさん歩く」だけではない
歩く量を増やすことは体力維持に重要ですが、痛みを我慢して距離だけを伸ばすと、代償歩行が固定されることがあります。まず連続歩行時間を把握し、痛みが大きくなる前に休憩を入れます。
歩行では、踵接地だけを強制するのではなく、患側へ体重を乗せられるか、股関節が後ろへ伸びるか、骨盤が安定するか、足部が地面を押せるか、腕振りと体幹回旋が自然かを確認します。
杖は負けではなく、股関節の負担を下げながら活動量を保つ道具です。必要な時期に使わず歩かなくなるより、適切に使用して外出や筋力を維持する方が合理的です。高さや持つ側が合わないと肩や腰へ負担が出るため、確認して使います。
日常動作ごとのリハビリ
椅子から立つ
座面が低いと股関節の曲がりが深くなります。足を少し引き、体幹を股関節から前へ傾け、両脚へ均等に荷重します。痛い側を極端に前へ逃がし続けると、患側を使う機会が減るため、段階的に戻します。
階段
上りでは股関節伸展筋と膝伸展筋、下りでは片脚で身体を制御する力が必要です。手すりを使い、一段ずつ練習し、痛みが強い時は上りを楽な脚から、下りを痛い脚から行う方法も使います。最終的には左右交互へ戻すことを目標にします。
靴下・爪切り
股関節を深く曲げて内側へ入れる動作がつらい場合、無理に可動域を広げず、椅子の高さ、足台、長柄の補助具、体幹の向きを工夫します。できない動作を繰り返して炎症を増やすより、安全な代替方法を使いながら必要な機能を育てます。
車の乗り降り
片脚ずつひねって入ると股関節へねじれが集中します。座面へ先に腰掛け、両脚をそろえて身体ごと回す方法を練習します。車高や座席位置によって負担が変わるため、実際の生活条件で確認します。
保存療法・手術前・手術後で役割が違う
保存療法では、痛みと活動量を管理し、使える可動域と筋力を保ち、生活範囲の低下を防ぐことが中心です。手術をしないと決めた人でも、何もしないという意味ではありません。
手術を予定している人は、術前に上肢・反対側下肢・体幹を含む移動能力を整え、術後の生活環境を準備します。ただし、手術前に痛みを我慢して筋力を追い込む必要はありません。
人工股関節全置換術後は、術式、進入法、医師の指示によって注意点が異なります。脱臼肢位や荷重制限を自己判断せず、病院のリハビリを優先します。あつ整体院が関わる場合も、医師の許可と制限の範囲で、歩行、体幹、反対側、足部、生活動作を補完します。
あつ整体院が股関節リハビリで確認すること
私が診る中心は、整形外科で診断を受け、薬・注射・リハビリを行っても、歩行や生活動作が十分に戻らない方です。レントゲンの変形を否定せず、その上で「今の身体がどこで耐えられなくなっているか」を確認します。
- 股関節の屈曲・伸展・外転・回旋の使える範囲
- 前面・外側・殿部のどこで痛むか
- 骨盤と腰椎の代償、体幹の傾き
- 両脚立位から片脚支持への荷重移動
- 股関節外転筋・伸展筋・内転筋の働き方
- 膝、足首、足部が歩行へ与える影響
- 靴下、階段、車、家事、仕事での反復負荷
- 睡眠、活動量、体力低下、目標とする生活
施術では、関節包や周囲組織の動き、筋の過緊張、皮膚表層・浅い筋膜、腰椎・骨盤・足部など、評価で必要と判断した範囲へ介入します。ただし、強く押し込んで可動域を作ることや、変形を矯正できると約束することはしません。
施術後は、立ち上がり、片脚荷重、歩行、階段などで変化を再確認します。変わった条件を患者さん自身が再現できる運動へ落とし込み、歩行量、家事、仕事、旅行へ段階的につなげます。変化しない方法は惰性で続けず、評価を更新します。

病院へ戻す基準と相談のタイミング
急な荷重不能、転倒後の強い痛み、発熱、安静時痛の増加、急な脚長差感、進行する筋力低下、排尿・排便障害を伴う腰・脚症状などは医療機関へ戻します。また、保存療法で生活障害が大きくなり続ける場合は、手術を含む治療選択を整形外科で再相談します。
一方、必要な医療を受けても、何をどの順で練習すればよいか分からない、運動すると毎回悪化する、筋トレはできるのに歩き方が変わらない、靴下や車の乗降が戻らない場合は、あつ整体院へ相談するタイミングです。
目標は単に痛みをゼロにすることではなく、買い物、仕事、旅行、趣味をどの条件なら再開できるかを明確にすることです。手術・薬・注射が必要な範囲は医師へ委ね、診断後に残る機能問題は、私が全身と生活から詳しく見ます。
股関節前面・外側・殿部で運動を分ける
脚の付け根前面に詰まりや鋭い痛みが出る人は、深い屈曲、内転、内旋が重なる動作をまず整理します。単に腸腰筋が硬いと決めつけて前面を強く伸ばすのではなく、骨性制限、関節包、骨盤後傾、腰椎代償、歩幅との関係を確認します。
大転子周囲の外側痛が強い人は、痛い側を下にして寝る、片脚で立ち続ける、脚を組む、横向き脚上げを繰り返すことで圧迫が増える場合があります。中殿筋を鍛える方針自体が間違いではなくても、痛みが落ち着く姿勢と負荷へ変更する必要があります。
殿部痛では、股関節由来、腰椎、仙腸関節、深殿部の末梢神経などを分けます。殿部が痛いから梨状筋を強く伸ばすという一律の対応はしません。症状が脚へ広がる、しびれや筋力低下がある場合は、神経学的評価を優先します。
左右差だけで筋力を判断しない
痛い側の筋力が弱く見えても、痛みや恐怖で力を出せないことがあります。反対側も長期間の活動低下で弱っている場合、左右差が小さいから正常とは言えません。徒手的な筋力だけでなく、立ち上がり回数、片脚支持時間、段差、歩行速度、連続歩行時間を合わせて見ます。
筋力を高める時も、最大限の力を出す運動から始める必要はありません。関節を動かさず力を入れる等尺性運動、両脚での荷重、低い段差、ゆっくりした立ち上がりへ進め、動作中に骨盤が逃げない範囲を選びます。
筋肉がついたかだけでなく、買い物の途中で休む回数が減った、靴下を履く時の代償が小さくなった、階段で手すりへの依存が減ったという生活上の変化を成果として評価します。
運動後24時間の反応で調整する
運動中に痛みが軽くても、夕方や翌朝に強くなることがあります。私は、運動直後、数時間後、翌朝の三つの時間で反応を見ます。翌朝に跛行が増える、夜間痛が出る、日常動作が落ちる場合は、回数、負荷、可動範囲、種目のどれかが過剰です。
逆に、少し張る程度で翌朝には戻り、生活動作が悪化しないなら、必ずしも運動を中止する必要はありません。痛みをゼロにしてから動くのではなく、許容できる反応の範囲を個別に決めます。
記録は簡単でかまいません。運動種目、回数、歩いた時間、夜間痛、翌朝の最初の一歩を残すと、何が合っているかが分かります。調子のよい日に一気に増やすのではなく、週単位で一つの要素だけを上げます。
旅行や仕事へ戻す実践的な段階づけ
旅行へ戻りたい人には、院内で数分歩けることだけでなく、駅までの距離、待ち時間、階段、荷物、乗り物の座席、翌日の回復まで考えます。まず近所の短時間外出、次に休憩を含む買い物、半日の外出というように、総時間と環境を段階づけます。
立ち仕事では、左右均等に立つことを強制するより、足台を使う、作業位置を変える、短い座位休憩を入れる、方向転換の回数を減らすなど、負担を分散します。デスクワークでは、低い椅子や長時間の股関節屈曲を避け、定期的に立って小さく動きます。
家事や仕事を完全に止めると再開時の壁が高くなります。できる作業を残し、痛みが増える部分だけを一時的に代替し、機能が上がるにつれて役割を戻します。リハビリは施術室の運動ではなく、その人の生活を再構築する作業です。
睡眠と夜間痛もリハビリの一部
夜間痛が強い人は、運動量だけでなく、痛い側を下にする姿勢、脚の間隔、寝返り回数、日中の総負荷を確認します。枕やクッションを膝の間に入れて股関節の内転を減らす方法もありますが、全員に同じ姿勢を固定せず、眠れる条件を探します。睡眠不足が続けば痛みへの耐性と活動意欲も落ちるため、夜の状態を無視して運動量だけを増やしません。
夜間痛が急に強くなり、安静でも増え続ける場合は、姿勢調整だけで済ませず整形外科へ戻ります。
股関節のリハビリでは、運動種目を増やすより、今の目標に不要な運動を減らす判断も大切です。十種類の体操を毎日こなして疲れ切るより、歩行、階段、靴下など最優先の動作に必要な二、三種目へ絞り、反応を確認する方が計画を修正しやすくなります。
また、体重管理や全身持久力は股関節への負担と活動能力に関係しますが、痛みのある人へ単に「痩せてください」と伝えるだけでは解決しません。現在できる有酸素運動、食事、睡眠、歩行量を現実的に組み合わせ、関節を守りながら体力を落とさない方法を考えます。
よくある質問
Q1. 痛くても歩いた方がよいですか?
完全に動かないことによる筋力・体力低下は避けたいですが、痛みを我慢して距離を伸ばす必要はありません。連続歩行時間、歩行後と翌朝の反応を確認し、悪化前に休憩を入れながら活動量を調整します。
Q2. 中殿筋を鍛えればよくなりますか?
中殿筋は重要ですが、それだけではありません。股関節伸展筋、内転筋、体幹、膝、足部、歩行のタイミングが関係します。横向き脚上げで外側痛が出る人は、種目や負荷を変更します。
Q3. 開脚ストレッチは必要ですか?
開脚角度を広げることが目的ではありません。脚の付け根に鋭い痛みや詰まりが出るなら中止し、生活に必要な可動域を別の方法で確保します。骨性制限を無理に押し広げないことが重要です。
Q4. 水中歩行はよいですか?
浮力で荷重を減らしながら動けるため選択肢になります。ただし、動きすぎや平泳ぎのような股関節運動で痛む場合があります。医師の指示と翌日の反応を見て量を調整してください。
Q5. 杖は使わない方が筋力がつきますか?
痛みで歩行量が大きく減るなら、適切な杖で負担を下げて活動を保つ方が有利な場合があります。通常は痛い側と反対の手で持ちますが、高さと使い方を確認してください。
Q6. 注射後はすぐ運動できますか?
注射の種類と医師の指示に従います。痛みが軽くなっても関節の耐久性が急に上がったわけではないため、強度や歩行量を急増させず、段階的に再開します。
Q7. 手術を勧められたら整体は無意味ですか?
明確な手術適応は医師と相談します。術前の体力・生活準備、手術までの負担調整、術後に許可された範囲の歩行・全身機能の補完など、役割を分けて関われる場合があります。
Q8. いつあつ整体院へ相談すればよいですか?
整形外科で診断と必要な医療を受けても、歩行、階段、靴下、車、仕事が戻らず、運動の選び分けや全身の連動評価が必要な時です。医療へ戻す状態かどうかも含めて整理します。
まとめ
変形性股関節症のリハビリは、痛みを我慢して筋トレやストレッチを増やすことではありません。痛みと活動量、必要な可動域、支える力、片脚支持、歩行、生活動作の順に、その人の状態へ合わせて進めます。
急な荷重不能、外傷、発熱、安静時痛の増加、明確な手術適応は整形外科を優先します。医師から薬、注射、手術、医学的リハビリテーションが必要と判断された場合は、その指示を尊重してください。
高槻あつ整体院では、必要な診断後も残る歩行や生活動作の問題を、股関節だけでなく骨盤、腰椎、膝、足部、体幹、活動量から評価します。施術で動きやすい条件を作り、運動、歩行再教育、負荷調整へつなげます。何をしても痛む、運動はできるのに生活が戻らない方は、順番を整理するために相談してください。







